切り紙ワークショップ@図書館

阿佐谷図書館特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」から レポート2

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3月18日と20日の2日間にわたって行われた切り紙のワークショップは、お陰様で参加者の大好評のうちに終了致しました!毎回ワークショップをする度に驚くのは、ハサミを持って紙を切り始めるとまもなく、深い静寂に会場全体が包まれるということです。あまりもその静けさの密度が濃いので、時折、「皆さんちゃんと息をしていますか?」「集中しすぎて息をするのを忘れないでくださいね。」と、声がけをしなければならないほど。それほど静かになってしまいます。これは、小さいお子さんでも変わらず、2時間ぐらいは平気でこの集中が続くんです。このことは、昨年の英国での小学生とのワークショップでも同様でした。どうやら、「紙を切る」という作業は、ある種の瞑想のような効果をもたらすのではないか、と思っています。

切り紙のワークショップでは型紙を提供しますが、それを使ってもらうも良し、年齢や経験値によって様々にアレンジしてオリジナルのものにしてもらえたら更に良い、というスタンスです。でも、切り紙の面白いところは、例え同じ型紙を使ってつくっても使う色の組み合わせによって全く違う印象のものになるところです。そしてこれは、他のひとがいるからこそ気がつくことでもあります。色が与える影響の大きさと、どんな色の組合せからも必ず何か感じることがあることに毎回感動します。

以下は、内容のレポートと感想です。

1)3月18日(土)14~16時「切り紙でコーナーブックマークをつくろう」対象:小学生から

下は小学1年生から上は80歳の方まで男女幅広い年齢層の方にご参加頂きました。これだけバラエティに富んだ年齢層とのワークショップは私にとっても初めてのことだったのですが、このことが却ってお互いの刺激にもなり良い結果を生んだように感じました。

まず、とてもシンプルなつくりのコーナーブックマークを紙で折るところから始め、その後、型紙を使って切り取ったモチーフで装飾していきます。手とハサミを動かすうちにどんどん楽しくなって新しいアイディアが生まれてくるのが分かります。モチーフの枝豆に目と鼻と口を描いたら枝豆の兄弟になりました!ちょっとカットが複雑なメジロだってこの通り。小学生の彼は、メジロの目玉の白にこだわって白い紙を1㎜にも満たない大きさに切り抜き完成させました!一度では上手くいかずとも何回か諦めずにチャレンジして成功させた集中力には素晴らしいものがあり、真剣に取り組む姿は感動的でした。「満足?」と聞くと、大きく一度頷いてくれました。カットもとても美しく出来ています。

それぞれのつくっているものを紹介すると「わあ、かわいい!」「そんな色の組合せがあったなんて!」「すてき!」「すごい!」などなど感嘆と誉め言葉があちらこちらから聞こえてきます。子ども達は大人の言葉に自信と喜びを感じ、大人たちは子どもの感性に大いに学び刺激を受けた場となったようです。

2)3月20日(月祝)13:30~15:30「切り紙でピーターラビットのポップアップカードをつくろう」対象:中学生から

こちらも中学生から70代までの方にご参加頂きました。始めに自己紹介も兼ねて、英国での展覧会とワークショップの様子に加えて、湖水地方の風景や英国の食べ物などをご紹介したスライドをご覧頂いてピーターラビットの世界にイメージを広げてもらいました。

基本となるポップアップカードの構造を説明し組立てるところからスタートです。これは背景となります。その後で各自が使いたいモチーフを選んで配置していきます。同じモチーフを使っても十人十色の組立て方で、それぞれのピーターラビットの物語世界が出来上がりました。切ったり折ったりと手を動かすうちに、だんだんと個々のクリエイティビティが発揮されていき、オリジナルのかたちが表れていきます。思ったように上手く切れずに失敗と思っても、今あるかたちを生かしてつくれば想定していなかったようなものが生まれることは多くあります。それこそが創造です。つくることは、一瞬一瞬が選択と決断の繰り返しです。それが出来る、ということに大いに自信を持って頂きたいと思います。

ある男性の方は、その作品をみんなに褒められて「こんなに褒められたことはないなあ、自信もっちゃうなあ。」と笑顔。普段の生活ではなかなかない場面でもあります。お互いに褒めあう言葉がたくさん聞かれたこの場では、間違いなく細胞を活性化させ免疫力がアップしたことでしょう。

全体として

アンケート結果からも、おひとりおひとりがとにかく楽しんで頂けたことは大変嬉しいことでした。喜びと生気に溢れた空間であったと思います。それも館長の黒谷さんはじめスタッフの皆さんのお人柄や普段の姿勢が創り出している良い雰囲気があってこそです。

手を動かすことで、あるいはその結果生まれたかたちから、おひとりおひとりのもつ創造力が刺激され、新たな創造へと繋がります。毎回、その制作途中で皆さんのなかのクリエイティビティがスパークリングする瞬間があり、そこからはもう完全にそのひとは自由になります。ご自分の世界で遊び始めるからです。その凝縮した瞬間を見られることは、私にとって、ワークショップをしていることのひとつの醍醐味でもあります。

ワークショップのよいところは、ほかの参加者の方と同じ時間、同じ空間を共有するということです。決してひとりでは得られない化学的な反応がお互いを触発し合い、より多くの喜びを生みます。

ワークショップの時間中、私は「是非ほかの方のつくっているものを見て回ってください」、と声がけをします。ほかの方の色遣いやアイディアに感心したり、新しい発見をして触発されるなどの良い刺激が生まれるからです。ワークショップでは、誉め言葉がたくさん聞かれます。多くの人は日常的に叱られたり責められることはあっても、褒められることはなかなかないのではないでしょうか。

今回、参加された皆さんは確実にひとりでは決して得られない経験をされたと思います。ここから、各自があそこで体験して持ち帰ったものを広げて行ってもらえなら、こんなに嬉しいことはありません。何事も、実際にご自分で体験してみるまでは本当のことはわかりません。ですからぜひ多くの方に、まずはやってみる、ことをお勧めします。

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掲載写真提供 阿佐谷図書館 Photo by Asagaya library


[企画展示] 切り紙ってなあに 期間:3月7日(火)~4月2日(日)

切り紙ワークショップ関連展示@杉並区立阿佐谷図書館

特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」3月15日(火)~3月20日(月) 2階 展示室 一部展示 3月5日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー・ 2階 児童コーナー

「ピーターラビット」 3月1日(水)~3月20日(月)1階入口

「ビアトリクス・ポター のいた英国」3月7日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー

「切り紙ってなぁに?」 3月7日(火)~4月2日(日) 2階 児童コーナー

ブックアートと図書館での展示

阿佐谷図書館特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」から レポート1

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日本ではまだあまり馴染みのない『ブックアート』について少し書いてみたいと思います。「ブックアートとは?」という解釈については、作家によって様々ですが、大まかに言って『本という形態に独自の解釈を行い表現するアート』と言えるのではないかと思います。その表現方法は作家によって様々で、元々ある本をつくり変えるaltered bookといわれるものから、立体やモノとしてのobject bookなど本とはいっても全くテキストのないものや、もはや本としての構造に囚われない全くのオブジェや彫刻のようなものまでを含みます。本の中身としては、自作の版画や絵、コラージュなどが使われることもあります。

個人的には、やはり開いて閉じるという本の構造に興味を惹かれますので、大方そこに軸を置いた作品作りをしています。表紙を開くことでその中に描かれた物語やイメージの世界がその場に表出する、そこには本と鑑賞者(読者)の非常に親密な関係があります。

これまで、海外のアーティストブックまたはブックアートフェアや、アートギャラリーなどを中心とした展覧会での作品発表を行ってきました。私がいたイギリスの図書館では、様々な本に関連したイベントのひとつにブックアーティストによる本づくりのデモンストレーションがあるなど、来館者は直接アーティストに質問をしたり、その制作の様子を見ることが出来ました。過去にも海外では、ブックアートの展覧会に合わせて図書館での展示もありましたが、海外ということもあり現地のキュレーターに任せている場合が多く、実際にどのようなレスポンスがあるのかなど直接肌で感じる機会があまりありませんでした。

しかし今回、幸運にも阿佐谷図書館での展示の機会を頂いたことで、広く一般の方々に『本というアート』または「本への新しいアプローチ方法や楽しみ方」を知って頂くのに、図書館という場はとても有効であるということに気が付きました。今回の展示作品の中には、現存する物語を題材にしたり、そこから得たインスピレーションを作品としたものもいくつか含みました。そこで、館長の黒谷さんにお伝えし、「作品と一緒に題材にしたオリジナルの本を展示する」、ということもしてみました。そうすることで、鑑賞者は作家の物語の解釈やアプローチ方法というものをより身近に感じてもらえたのではないかと思いますし、それを鏡として、今度は鑑賞者個人の新たな解釈やアプローチ・好奇心に繋がっていくのなら大変喜ばしいことです。また、各ワークショップ終了後にご提案頂いて行ったギャラリートークでは、作品について解説しながら、アートブックがどのようにポップアップするのかなどを実際にお見せすると歓声が上がり、ただ展示するだけでなく作家側も一歩進んで伝える、という姿勢がより関心を持って頂けることにつながるのだな、と実感致しました。

4週間にわたる企画展示「切り紙ってなあに」という切り紙の本のご紹介を軸に、展示やワークショップを通して、紙の造形の美しさとその表現の可能性、更に本というかたちについて考え表現するブックアートについてもご紹介した今回の展示。この試みが是非、今後の新たな展開へとつながり更に多くの方に様々な本の楽しみ方を発見して頂けることを願っています。

最後にこの企画展示について、時には一緒に考え様々なご提案とご尽力を賜りました阿佐谷図書館の館長黒谷さんとご担当頂いた岩田さんをはじめ、スタッフの皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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掲載写真提供 阿佐谷図書館 Photo by Asagaya library


[企画展示] 切り紙ってなあに 期間:3月7日(火)~4月2日(日)

切り紙ワークショップ関連展示@杉並区立阿佐谷図書館

特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」3月15日(火)~3月20日(月) 2階 展示室 一部展示 3月5日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー・ 2階 児童コーナー

「ピーターラビット」 3月1日(水)~3月20日(月)1階入口

「ビアトリクス・ポター のいた英国」3月7日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー

「切り紙ってなぁに?」 3月7日(火)~4月2日(日) 2階 児童コーナー

Shape of Prayer~祈りのかたち

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There was an annual autumn festival at Meiji Jingu Shrine in Tokyo. Lots of local groups called Kagura which perform the folk dances with Japanese drums and flutes gathered together in order to dedicate their performances to the God of the Shrine. They say that it represents people’s prayer. Some of the photos show one of them. It was a rare opportunity to see such performance in Tokyo. It was very interesting for me and also nice to get fresh air on such a lovely day.

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休日に明治神宮を訪れた。秋晴れの気持ちの良い日で、秋の例祭中ということもあってか多くの参拝客で大層な賑わいだった。各地のさまざまな品々が献上され、御神楽などの奉納も行われていた。写真は、国の重要無形文化財である御宝殿熊野神社の「稚児田楽・風流」。いわき市の貴重な文化遺産ということである。この田楽の変化する隊形の形は、田植えから収穫に至るまでの農耕神事を儀礼化したものだそう。兎と三本足の烏の鉾はその年の収穫を占うものとして用いられるということである。風流といわれる獅子舞は、白鷺、雌雄鹿、青龍、大獅子の4種の舞からなる。いずれもやはり、豊作や子孫繁栄など人々の祈りのかたちを表している。年間を通して各地で行われるこのような祭りや儀式を、これまで守り継承してきた人々の思いが今後も続いていくことを願う。帰りに引いたおみくじは、まさに今の自分に必要なメッセージを頂いたな、と肝に銘じたことであった。

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ニキ・ド・サンファル展と断捨離

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友達に誘われてニキの展覧会を観に行ったときのこと。私にとっては思いがけず、ほぼ二十年ぶりの再会という感じであった。二十年前、初めてニキに出会ったとき私はひと目でその作品に恋をした。その自由で色彩豊かで豊満なかたちが奏でる音楽に夢中になり、「タロットガーデン」を創りあげたニキに憧れた。その時ものすごく好きで夢中になったものでも、いつしか自分でも気がつかないうちにそれをみても触れても心が動かなくなる時が来ることがある。あんなに大好きだったのに。

少し前から断捨離を始め、暇をみてはせっせとものを処分している。その時、基準にするのはこんまりさんややましたさんなどその道のプロが言っているように、それをみてときめくかどうか、ということだ。なかでもカレン・キングストンの著書は一番、私には断舎利を考えるときの指針になった。(この本はものを捨てる、ということを超えて、魂をきれいにすること・生き方について書かれたもので多くの示唆に富む良書である。)この本についてはまた別の機会に書くとして、先に述べたような状態になる場合すでにそのものの「エッセンス(本質)」を十分味わい尽くしたからである、とカレンは書いていて妙に納得した。だからあんなに恋い焦がれたものに少しもときめかなくなっていることに気が付いても、それは少しもさみしいことではなく、むしろすでに十分に愛しそのものが持っているコアのエッセンスは、もう十分に摂りこまれ自分の一部になっている、ということなのだと思う。だから、もう必要でなくなり手放しても良い状態になっている、ということなのだ。これは、ものに限らず人との関係にも言えることと思う。恋愛然り。それでも、長い年月を経ても決して色褪せないものがあり、それらは「クラシック・古典」といわれるものたちだ、とカレンは言っている。年月を超えてひとを魅了し続けるもの。後世に残るもの。

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さてニキのエッセンスは、すでに私の一部になっていて忘れていたくらいだ。ニキに夢中になっていた時間、その時若い私が欲していたものをニキの作品はたくさん与えてくれた。私はそれらに満たされ幸福だった。それは素晴らしい体験だったし、そういうものにどれだけたくさん出会えるかがそのひとの人生を豊かに形作っていくのだな、と思う。これから出会うひと・ものたちを楽しみにしたい。ニキのタロットガーデンもいつか訪れてみたい。

The 13th Moon~十三夜の月光浴

13th moon

Last night was the thirteenth moon which was also called ‘kuri-meigetsu (chestnut moon) in Japan. I had my first wonderful experience of looking up the moon through an astronomical telescope in the Hyakkaen garden. I could see the sea in the moon and lots of craters on her surface. It strongly reminded me the reality of her existence in the far distance from our earth. Flowers and trees were shining bright in the moonlight with the chirping of cricket. It was a sacred quietness and everything on that night was a very exciting experience for me.  13th moon

昨夜(10月25日)は十三夜、中国から伝わったとされる中秋の名月(十五夜・芋名月)に対して、栗名月(後の月)とも言われている日本独自の月見の風習ということである。今年は月光浴を楽しみに、夜の向島百花園に出かけた。夜の植物園に入れる!という稀有な機会を逃してはいられない。夜空は雲一つなく澄みわたり、月光浴には最高の日となった。神々しく光る月は気高くて美しく、くっきりと眩しいほどに輝いていた。月の光に照らされると、こころの中まですべて晒されてなにもかも見透かされているような気持ちになり、ついからだが縮こまってしまうような気になるのはなぜだろう?

供物

 

 

さて、虫の音があちらこちらからチロチロと聞こえる中、今回がほぼ初の体験となった望遠鏡での観測。見えた月の表面には、月の海と大小さまざまなクレーターがはっきりと捉えられ、そのディテイルを目にしたことで「天体としての月」そのものが急にリアルさを持って感じられ興奮した。寒くなり空気も澄んでくるこれからの時期、観測会は癖になりそうだ。

ススキ門

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墨田区の向島百花園。江戸時代の風情が感じられます。