自然のかたち

先日訪れた横須賀美術館は、もう目の前がすぐ海で、館内に入ると天井が高く丸窓から白壁に光りが差し込み、さながら船内にいるような感覚に。ずっと行ってみたかった美術館だったし、横須賀はBunkamuraのクラフト展で知り合った裂織り作家の恵美子さんがお住いで運よくご一緒して頂けることになり、ちょっとした小旅行気分で出かけてきた。すでに終了してしまったが夏休みの子供たちにはぴったりの企画展で、初めて見る鉱物から昆虫や植物、岩石の標本や写真などから様々な自然のかたちを知ることができ面白かった。鉱物の展示は、驚いたことにすべて自然のままだという。マスカットの粒にそっくりな石とか十字の模様があるその名も十字石とか、大きな石の間に寄生している綿のような石(オケナイトというらしいですが。)とか不思議なかたちをした鉱石がたくさんあってびっくりした。昆虫の拡大写真で精巧かつ緻密で美しいそのデザインを見ると、本当になんでそんな色とかたちになったのか自然の創り出す複雑な造形の不思議さにただただ圧倒されてしまう。

ハグロトンボこちらはその翌日野川公園で撮影したハグロトンボ。展覧会にはチョウトンボの標本があったなあ。蝉も近づく夏の終わりにまだまだ一生懸命生きてる。

セミ

横須賀美術館には地元所縁の谷内六郎館もあって、こじんまりした心地よい空間で週刊新潮表紙絵の原画も観れた。涙が出そうなほど本当に優しい絵だった。それは弱さではなく、心の奥の静かな場所にぴったり寄り添うような静けさを持っていた。魂に響く。そういう作品を私も目指したいな、と思う。

美術館のあとでお邪魔した恵美子さんのお家もまた、オーガニックで丁寧な暮らしぶりが感じられる素敵なところでした。使い込まれた古い家具や時計の鐘が心地よく響く居間は、自然の庭に囲まれて緑が目に優しい。鳥やリスも来る庭と2匹のフレンチブルドックと旦那様との心豊かな生活があの素敵な作品を生むのね、とその秘密を知り納得。嬉しいご縁に感謝です。

カラスウリ1夏の夜に花を咲かせるカラスウリ。こちらも最後の花ががんばって咲いていました。これも蔓植物。初めて夜の仄暗さのなかで花開いているのを見た時には感動したなあ。人知れず植物の時間があるんですね。この世界はひとつも見逃せない、という気になります。五感を開いて出会わなければ!望めばきっとその美しさを魅せてくれるでしょう。

 

 

Shape of Prayer~祈りのかたち

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There was an annual autumn festival at Meiji Jingu Shrine in Tokyo. Lots of local groups called Kagura which perform the folk dances with Japanese drums and flutes gathered together in order to dedicate their performances to the God of the Shrine. They say that it represents people’s prayer. Some of the photos show one of them. It was a rare opportunity to see such performance in Tokyo. It was very interesting for me and also nice to get fresh air on such a lovely day.

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休日に明治神宮を訪れた。秋晴れの気持ちの良い日で、秋の例祭中ということもあってか多くの参拝客で大層な賑わいだった。各地のさまざまな品々が献上され、御神楽などの奉納も行われていた。写真は、国の重要無形文化財である御宝殿熊野神社の「稚児田楽・風流」。いわき市の貴重な文化遺産ということである。この田楽の変化する隊形の形は、田植えから収穫に至るまでの農耕神事を儀礼化したものだそう。兎と三本足の烏の鉾はその年の収穫を占うものとして用いられるということである。風流といわれる獅子舞は、白鷺、雌雄鹿、青龍、大獅子の4種の舞からなる。いずれもやはり、豊作や子孫繁栄など人々の祈りのかたちを表している。年間を通して各地で行われるこのような祭りや儀式を、これまで守り継承してきた人々の思いが今後も続いていくことを願う。帰りに引いたおみくじは、まさに今の自分に必要なメッセージを頂いたな、と肝に銘じたことであった。

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ニキ・ド・サンファル展と断捨離

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友達に誘われてニキの展覧会を観に行ったときのこと。私にとっては思いがけず、ほぼ二十年ぶりの再会という感じであった。二十年前、初めてニキに出会ったとき私はひと目でその作品に恋をした。その自由で色彩豊かで豊満なかたちが奏でる音楽に夢中になり、「タロットガーデン」を創りあげたニキに憧れた。その時ものすごく好きで夢中になったものでも、いつしか自分でも気がつかないうちにそれをみても触れても心が動かなくなる時が来ることがある。あんなに大好きだったのに。

少し前から断捨離を始め、暇をみてはせっせとものを処分している。その時、基準にするのはこんまりさんややましたさんなどその道のプロが言っているように、それをみてときめくかどうか、ということだ。なかでもカレン・キングストンの著書は一番、私には断舎利を考えるときの指針になった。(この本はものを捨てる、ということを超えて、魂をきれいにすること・生き方について書かれたもので多くの示唆に富む良書である。)この本についてはまた別の機会に書くとして、先に述べたような状態になる場合すでにそのものの「エッセンス(本質)」を十分味わい尽くしたからである、とカレンは書いていて妙に納得した。だからあんなに恋い焦がれたものに少しもときめかなくなっていることに気が付いても、それは少しもさみしいことではなく、むしろすでに十分に愛しそのものが持っているコアのエッセンスは、もう十分に摂りこまれ自分の一部になっている、ということなのだと思う。だから、もう必要でなくなり手放しても良い状態になっている、ということなのだ。これは、ものに限らず人との関係にも言えることと思う。恋愛然り。それでも、長い年月を経ても決して色褪せないものがあり、それらは「クラシック・古典」といわれるものたちだ、とカレンは言っている。年月を超えてひとを魅了し続けるもの。後世に残るもの。

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さてニキのエッセンスは、すでに私の一部になっていて忘れていたくらいだ。ニキに夢中になっていた時間、その時若い私が欲していたものをニキの作品はたくさん与えてくれた。私はそれらに満たされ幸福だった。それは素晴らしい体験だったし、そういうものにどれだけたくさん出会えるかがそのひとの人生を豊かに形作っていくのだな、と思う。これから出会うひと・ものたちを楽しみにしたい。ニキのタロットガーデンもいつか訪れてみたい。

The 13th Moon~十三夜の月光浴

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Last night was the thirteenth moon which was also called ‘kuri-meigetsu (chestnut moon) in Japan. I had my first wonderful experience of looking up the moon through an astronomical telescope in the Hyakkaen garden. I could see the sea in the moon and lots of craters on her surface. It strongly reminded me the reality of her existence in the far distance from our earth. Flowers and trees were shining bright in the moonlight with the chirping of cricket. It was a sacred quietness and everything on that night was a very exciting experience for me.  13th moon

昨夜(10月25日)は十三夜、中国から伝わったとされる中秋の名月(十五夜・芋名月)に対して、栗名月(後の月)とも言われている日本独自の月見の風習ということである。今年は月光浴を楽しみに、夜の向島百花園に出かけた。夜の植物園に入れる!という稀有な機会を逃してはいられない。夜空は雲一つなく澄みわたり、月光浴には最高の日となった。神々しく光る月は気高くて美しく、くっきりと眩しいほどに輝いていた。月の光に照らされると、こころの中まですべて晒されてなにもかも見透かされているような気持ちになり、ついからだが縮こまってしまうような気になるのはなぜだろう?

供物

 

 

さて、虫の音があちらこちらからチロチロと聞こえる中、今回がほぼ初の体験となった望遠鏡での観測。見えた月の表面には、月の海と大小さまざまなクレーターがはっきりと捉えられ、そのディテイルを目にしたことで「天体としての月」そのものが急にリアルさを持って感じられ興奮した。寒くなり空気も澄んでくるこれからの時期、観測会は癖になりそうだ。

ススキ門

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墨田区の向島百花園。江戸時代の風情が感じられます。

紫陽花ガール~Flower Girl~

Finally, I can show you new papercutting works, one is Hydrangea Girl and another is Twin Sisters. I could also visit Myosho-ji Temple where have a beautiful garden with hydrangia and stone lantern. I spent a tranquil time there in this weekend. You will also find Hoksai’s Ukiyo-e named “Hydragia and Swallow” below.

ようやく出来ました。「紫陽花ガール」と「双子姉妹」です。

ajisai girltwin sisters週末の夕方暑さが少し納まる頃、堀之内妙正寺に行って来ました。都内でも風情な紫陽花の群生が楽しめるということで、すでに七月ですが、小さな望みを持って出掛けてみました。さすがに盛りは過ぎていましたが、都内とは思えないような静寂な景観のなか、ひっそりと苔むした石灯籠に寄り添うように涼しげなブルーが鮮やかな紫陽花が数株まだ咲いていました。もともと日本に自生するガクアジサイが原種だそうで、万葉集にも詠まれていますね。紫陽花にはやはり雨が似合います。来年はぜひ、6月の満開時、雨降りの日に訪れてみたいな、と思いました。

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こちらは、葛飾北斎の浮世絵 「紫陽花に燕」。

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寺社建築の立派な山門と祖師堂。木肌を活かした見事な彫刻も迫力があります。生前ご近所に住んでいらしたという作家有吉佐和子さんの碑もありました。

山門お堂3障子に映る美しい草木の影。週末、鮮やかな緑が目に優しい境内で、日頃の喧騒から離れて静かなひとときを過ごしました。

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