“A Midsummer Night’s Dream” in Liverpool

Liverpool Book Art Fair 2016の一環として英国リバプール中央図書館で催されているブックアートの展覧会 “Shakespeare Now” に出品中のアートブック作品”A Midsummer Night’s Dream”についての続き。

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原題の”midsummer night”とは6月の夏至 midsummer day の夜のことであって、日本語訳の真夏のことではないようです。物語のシーンはこの夏至の夜の森の中。オーク(oak)の森です。ナラともカシとも訳されるようですが、昔からその樹皮やドングリは煎じ薬として傷や解毒剤として使われてきたそうです。妖精が住むとされるoakはイギリスのファンタジーストーリーではおなじみですね。

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作品では、闇夜のオークの森が月で照らされシルバーがかった濃い緑色に縁どられている感じをイメージして顔料を使って色付けしました。本全体が森そのものになることをイメージしてつくっているので、開いて立てた時に森が現れるような構造を考えており、展示に関してもページの開き方で森のかたちが変わります。

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専ら制作中はずっとメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」を聴きながら作業していましたが、これが17歳の時に作曲したものだなんて驚きです。ドビュッシー(Debussy)のピアノ曲にも「パックの踊り」 “La danse de Puck がありますね。音楽を聴きながら、夏至の夜の森の中で妖精たちと恋人たちのドタバタ喜劇が繰り広げられていることを想像してみてください。楽しいですよ。

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A Midsummer Night’s Dream

前回の続き。実は、ウィリアム・シェークスピアの喜劇「真夏の夜の夢」をモチーフにしたアートブックの断片でした。今年はシェークピア生誕400年にあたり、それに伴ってイギリスのリバプールで行われるブックアートの展覧会”Shakespeare Now”に出品する作品を制作しました。p1p2p3jpg

アテネ近郊の森の中で、妖精パックを中心に繰り広げられる人間と妖精たちの喜劇です。パックの仕業によって起こる4人の貴族の男女の結婚を巡るややこしい混乱の模様に加えて、妖精王と女王の「取り換えっこ」を巡る諍いをもとに頭をロバにされた職人まで加わり、ドタバタの恋模様が展開し混乱を極めますが、最後は大団円にハッピーエンドの結末を迎えます。ここで、大切な役割をするのがキューピッドの矢の魔法から生れた三色すみれの媚薬。これを処方されると目を覚まして最初に見た者に対して恋をしてしまうというもの。パックの仕業により、これが登場人物たちの恋模様に大混乱をもたらして話は展開するのです。

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こちらは三色すみれ。”love-in-idleness”との異名があり、この花を見た者は「人を恋う」といわれ、やはり古くは媚薬にも用いられたそうです。きちんと調べてみないとはっきりしたことはわかりませんが、シェークスピアの時代も使われていたのかもしれませんね。

実際の制作では、物語の人間模様、追いかければ逃げるもつれた関係の面白さを出したくて、森の中でジグザグ交差するポップアップの構造になりました。次回は物語が進行する森のことなどもう少し書いてみたいと思います。

Book Art Exhibition ” Shakespeare Now” Liverpool Central Library, Saturday 4 June – Sunday 31 July 2016