ブックアートと図書館での展示

阿佐谷図書館特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」から レポート1

スライドショーはこちらClick here for a slide show of Workshop and Exbition for Papercutting.

日本ではまだあまり馴染みのない『ブックアート』について少し書いてみたいと思います。「ブックアートとは?」という解釈については、作家によって様々ですが、大まかに言って『本という形態に独自の解釈を行い表現するアート』と言えるのではないかと思います。その表現方法は作家によって様々で、元々ある本をつくり変えるaltered bookといわれるものから、立体やモノとしてのobject bookなど本とはいっても全くテキストのないものや、もはや本としての構造に囚われない全くのオブジェや彫刻のようなものまでを含みます。本の中身としては、自作の版画や絵、コラージュなどが使われることもあります。

個人的には、やはり開いて閉じるという本の構造に興味を惹かれますので、大方そこに軸を置いた作品作りをしています。表紙を開くことでその中に描かれた物語やイメージの世界がその場に表出する、そこには本と鑑賞者(読者)の非常に親密な関係があります。

これまで、海外のアーティストブックまたはブックアートフェアや、アートギャラリーなどを中心とした展覧会での作品発表を行ってきました。私がいたイギリスの図書館では、様々な本に関連したイベントのひとつにブックアーティストによる本づくりのデモンストレーションがあるなど、来館者は直接アーティストに質問をしたり、その制作の様子を見ることが出来ました。過去にも海外では、ブックアートの展覧会に合わせて図書館での展示もありましたが、海外ということもあり現地のキュレーターに任せている場合が多く、実際にどのようなレスポンスがあるのかなど直接肌で感じる機会があまりありませんでした。

しかし今回、幸運にも阿佐谷図書館での展示の機会を頂いたことで、広く一般の方々に『本というアート』または「本への新しいアプローチ方法や楽しみ方」を知って頂くのに、図書館という場はとても有効であるということに気が付きました。今回の展示作品の中には、現存する物語を題材にしたり、そこから得たインスピレーションを作品としたものもいくつか含みました。そこで、館長の黒谷さんにお伝えし、「作品と一緒に題材にしたオリジナルの本を展示する」、ということもしてみました。そうすることで、鑑賞者は作家の物語の解釈やアプローチ方法というものをより身近に感じてもらえたのではないかと思いますし、それを鏡として、今度は鑑賞者個人の新たな解釈やアプローチ・好奇心に繋がっていくのなら大変喜ばしいことです。また、各ワークショップ終了後にご提案頂いて行ったギャラリートークでは、作品について解説しながら、アートブックがどのようにポップアップするのかなどを実際にお見せすると歓声が上がり、ただ展示するだけでなく作家側も一歩進んで伝える、という姿勢がより関心を持って頂けることにつながるのだな、と実感致しました。

4週間にわたる企画展示「切り紙ってなあに」という切り紙の本のご紹介を軸に、展示やワークショップを通して、紙の造形の美しさとその表現の可能性、更に本というかたちについて考え表現するブックアートについてもご紹介した今回の展示。この試みが是非、今後の新たな展開へとつながり更に多くの方に様々な本の楽しみ方を発見して頂けることを願っています。

最後にこの企画展示について、時には一緒に考え様々なご提案とご尽力を賜りました阿佐谷図書館の館長黒谷さんとご担当頂いた岩田さんをはじめ、スタッフの皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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掲載写真提供 阿佐谷図書館 Photo by Asagaya library


[企画展示] 切り紙ってなあに 期間:3月7日(火)~4月2日(日)

切り紙ワークショップ関連展示@杉並区立阿佐谷図書館

特別展示「荒川真由美・切り紙の世界」3月15日(火)~3月20日(月) 2階 展示室 一部展示 3月5日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー・ 2階 児童コーナー

「ピーターラビット」 3月1日(水)~3月20日(月)1階入口

「ビアトリクス・ポター のいた英国」3月7日(火)~4月2日(日)1階 展示コーナー

「切り紙ってなぁに?」 3月7日(火)~4月2日(日) 2階 児童コーナー